熊本県水俣市 協立クリニックは、水俣病の診断・治療・リハビリ、神経内科、精神科、内科を専門としています。

神経内科リハビリテーション 協立クリニック

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水俣病についての説明(医療従事者の皆様へ)

どのようなときに考えるか

多くの方々は、「水俣病」というと、著しい運動障害を有した劇症型の水俣病を思い浮かべられることでしょう。しかし、現在の慢性水俣病の多くは、全く異なった病像を示しています。

八代海(不知火海)沿岸に居住歴があり、魚介類を多食した人で、手足のしびれ、つまづきやすい、こむらがえりがあるなどの症状がそろっている人は、水俣病の可能性が非常に高く、それらのうちの一つだけを有している人であっても、診察で所見があれば水俣病の可能性があります。

症状については、「患者様向け」の欄で記載したとおりですが、感覚障害は中枢性のものが主体ですので、感覚障害の境界が決めにくい、範囲が変動するなどの特徴があります。重症例では、全身性に感覚障害を認めます。

失調も、必ずしも小脳失調だけでなく、むしろ感覚性失調に小脳性の要素も加わっていくというパターンが多いように思われます。その程度は重症度等に応じてさまざまです。また、体調や精神的緊張で程度が変化することがあります。

より重症例では、構音障害、聴力障害、求心性視野狭窄などの所見を認めます。構音障害ではこもるような発語で、パ行やラ行の発音が苦手なことが多いようです。聴力障害は、普通の難聴のほか、言葉の意味がとりにくい中枢性の特徴をもっていることもあります。

診断について

劇症型を「水俣病」として念頭に置かれている方々の中には、どうしてこのような人々まで水俣病にするのだろうかと疑問に思われる方もおられるかもしれません。私たちは、水俣病を「企業が排出した工場廃液に含まれる有機水銀によって汚染された魚介類を摂取することによって生じたことが個人レベルで診断しうる健康障害」と定義しています。メチル水銀は、非常に高い中枢神経に対する毒性を有しています。高濃度であれば、短期暴露でも重大な障害を引き起こしますし、低濃度であっても長期暴露によって健康障害を引き起こすことが分かってきています。

通常の疾患であれば、重症から軽症まで健康障害の解明を行っていくというのが、医学の常道です。しかし、なぜか水俣病のことになると、軽症の人を観察した医療人が「たったこれだけか」という反応を示すことはまれではありません。近年になって症状が出現している人々の存在をみるとき、重症から軽症までしっかりと病気の本態を解明していくことの重要性が認識されます。

水俣病の診断は、基本的に、メチル水銀曝露歴の存在と、特有の神経障害の存在が必要です。  これまでの医学的研究成果と、それに基づく司法判断などを基にして、、2006年4月に共通診断書が作成されました(http://www3.kumagaku.ac.jp/minamata/)。共通診断書で、水俣病と診断するのは、基本的には以下の場合です。

  • 魚介類を介したメチル水銀の曝露歴があり、四肢末梢優位の表在感覚障害を認めるもの。
  • 魚介類を介したメチル水銀の曝露歴があり、全身性表在感覚障害を認めるもの。
  • 魚介類を介したメチル水銀の曝露歴があり、舌の二点識別覚の障害を認めるもの。
  • 魚介類を介したメチル水銀の曝露歴があり、口周囲の感覚障害を認めるもの。
  • 魚介類を介したメチル水銀の曝露歴があり、求心性視野狭窄を認めるもの。
  • 上記A~Eに示す身体的な異常所見を認めないものの、魚介類を介したメチル水銀の濃厚な曝露歴があり、メチル水銀によるもの以外に原因が考えられない、大脳皮質障害と考えられる知的障害、精神障害、または運動障害を認めるもの。

2006年11月に、水俣病の診断について記述した「水俣病診断総論」を作成しました。 「研究業績」のページから閲覧・ダウンロードできますので、ご覧ください。

治療・リハビリについて

以下の治療は、あくまで一般的な内容ですので、実際の施行においては、各患者の容態に対する各医師の責任のもとに施行していただきますよう、お願い致します。

治療は、しびれなどに対する薬物療法としては、ビタミンB12、ATPなどを使用します。めまいに対しては、メニエースなども使用します。こむらがえりに対しては、バクロフェンやダントリウムが効くことが多いようです。

スモン病で使用された、ATPとナイクリンの点滴は、手足のしびれ、ふらつきなどに効果があることがあります。血管痛などに注意します。ATP、ナイクリンそれぞれ20mgを30分程度で点滴する場合、二週間にわたって、薬剤量をそれぞれ60mgに達するまで漸増する場合とがあります。

漢方薬も症状に応じて使用しますが、、手のしびれに対しては桂枝茯苓丸や桂枝加苓朮附湯、下肢のしびれに対しては牛車腎気丸などを使用することが多い傾向にあります。夜間に強くなるしびれや痛みのときは、お血症状の可能性があり、桂枝茯苓丸が効果があることがあります。桂枝茯苓丸では胃症状に注意します。こむらがえりに対しては、証にかかわらず芍薬甘草湯が著効することが多く、就寝前1回の投与でよいこともしばしばです。高血圧やアルドステロン症などの副作用に注意し、1日3回の投与は注意を要します。元気がないときは、補気剤の補中益気湯、食欲がないときは六君子湯、不眠には就寝前の酸そう仁湯などが有効です。

水俣病のしびれなど苦痛に対しては、ホットパック、低周波、マイクロ波などの物理療法や運動療法が有効です。当院では、関節痛や筋肉痛に対して、ツボに0.5%キシロカインを注射していくことで苦痛軽減に役立てています。

医療制度について

現在の、水俣病の公費負担制度については、それぞれ保険者番号がついています。患者様が手帳等を提出されたときは、各公費負担制度に請求をお願い致します。

【医療保険】 熊本県 鹿児島県 新潟県
水俣病被害者手帳
(療養手当て無し)
51433027 51463024 51153021
水俣病被害者手帳
(療養手当て有り)
51433019 51463016 51153013
医療手帳
(95年政治解決以前交付分)
51433019 51463016 51153013
水俣病認定申請者
医療手帳
51433035 51463032 51153039
【介護保険】 熊本県 鹿児島県 新潟県
水俣病被害者手帳
(療養手当て無し)
88433024 88463021 88153028
水俣病被害者手帳
(療養手当て有り)
88433016 88463013 88153010
医療手帳
(95年政治解決以前交付分)
88433016 88463013 88153010
水俣病認定申請者
医療手帳
88433032 88463039 88153036

【医療保険】では、歯科と正常分娩以外の保険診療の一部負担金について、高額療養費の限度額内での公費負担となります。

【介護保険】では、介護サービスの中で医療系サービス(訪問看護、通所リハビリ、訪問リハビリ、居宅療養管理指導科)にかかる一部負担について、介護保険の高額療養費の限度額内での公費負担となります。

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